今回はここ数年内に国内で発生した中で最も大規模とされる、食品からの経口感染による大規模な集団感染の事例をご紹介致します。
さる2014年1月頃、静岡県浜松市内の複数の小学校にて、児童らを中心とした大規模なノロウイルス感染事例が発生したのですが、この時の感染源とされているのが、給食として供されていた食パンでした。
■原因について
この観戦事例では、最終的に19の学校に渡って合計1,271名のノロウイルス感染症患者の発生が確認され、非常に大規模な感染症事例へと発展してしまいました。
市の調査チームによれば、事件発生時に同一の業者が各校に卸していた問題の食パンが出荷時点でノロウイルスに汚染していたということです。
そして、出荷前に食パンをひとつひとつ手に取って行う検品作業時に、検品を担当した従業員達の手が直接の汚染経路になったとされています。
業者への聞き取り調査では、基本的な衛生管理自体は問題無かったものの、各従業員が手洗いを行う為の手洗い場の水流が弱く、かつ冬場であるにも関わらず冷水しか出なかった為、各自の手洗いが十分に行い辛い環境にあったそうです。
また、作業時の使い捨て手袋の交換規則についても決まったものがなく、どのタイミングで手袋を交換するかは従業員の裁量に委ねられていたようです。
更に、従業員の作業着等の洗濯については事業所側が管理を行わず、従業員が各自自宅に持ち帰って自己裁量で行う形になっていました。
これらの事から判断するに、洗濯が不十分であったり、各家庭からのウイルスの持ち込みの可能性があったと考えられています。
■衛生管理徹底の難しさ
この事件の原因となった業者では、基本的な衛生管理についてはクリアしていたものの、手洗いや作業着の洗濯等における従業員の裁量に委ねられる部分の甘さがネックとなって集団感染を招く結果となってしまったと言えます。
この事例から学ぶ事としては、感染リスクを完全に防ごうと思うならば本当に隙の無い徹底した衛生管理が必要になって来るのだという事かと思われます。
給食だけに限らず、私達の普段の生活ではお弁当の仕出しや飲食店での外食等、自身の「食」を他人の手に委ねる状況が非常に数多く存在していますが、その中でどれだけの「食」が安心して享受を許するに足りえるものであると言えるでしょうか?
ノロウイルスは人間側がちょっとやそっと気をつけた程度では、容易にその警戒の網をかいくぐって私達の体内への侵入を執拗に狙ってきます。
私達が今後安心して食の恵みに与れるよう、食の提供に携わる業者の皆様の衛生管理体制の更なる向上と、それにあたって発生する業者様側の負担を十分に支えるだけの国からの支援制度の充実を切実に願わずにはいられません。