一般的に食中毒というと食材の足が早くなってしまう夏場を思い浮かべる事が殆どですが、強烈な食中毒症状を引き起こす事で有名なノロウイルスの場合は逆に冬場の方が感染リスクが高くなるとされています。
それは一体何故なのでしょうか?今回の記事ではその原因や理由についてご紹介させて頂きます。
■ウイルスは冬がお好き
一般的な傾向として、「ウイルス」という存在達は湿度と気温の高い夏場をあまり好まず、逆に乾燥していて気温の下がる冬場の環境こそを好む傾向にあると考えられています。
それを裏付けるように厚生労働省のHPにて紹介されている『どんな時期にノロウイルス食中毒は発生しやすい?』の欄では、冬の訪れとなる10月頃から一気にノロウイルスの感染事例が激増していき、翌年の3月頃までピークが続いているのが見てとれます。
これは「ウイルス」という存在が生物と物質の中間的な生態を持った大変に奇妙な存在である為に、細菌等の微生物類が苦手とする環境であっても平然としていられる程の耐久性を備えている事に起因しており、大抵のウイルスはむしろそういった環境こそを好んで活発になり易くなるという性質を持っています。
これらウイルスにとっての好条件はノロウイルスにも当然ながら当てはまるのですが、湿度や気温が低い環境ではウイルスにとって好ましいとされる以下のような状況が発生してしまうようです。
- 気温の低下によって人体の抵抗力が落ちてしまい、ウイルスがより容易に感染し易くなる。
- ウイルスの侵入を防ぐ役割を持つ喉や鼻の粘膜が乾燥と気温の低下によって減少し、ウイルスが体内に侵入し易くなってしまう。
- 乾燥のせいで空気中に浮遊しているウイルスが湿気に捕らえられて地面に落下しにくくなり、空気中を長く漂って広く拡散し易くなる。
- 空気が感染していると感染者のくしゃみや咳の飛沫が周囲に飛散しやすくなり、飛沫に含まれるウイルスが拡散し易くなる。
冬場が旬の牡蠣(カキ)にご注意
ノロウイルス感染症の流行が冬場に集中する原因としては主に前述のような気候が理由となっているのですが、それ以外のケースにおいてはウイルスに汚染された牡蠣(カキ)を食した事による食中毒が原因になっている事もあります。
秋から冬にかけて旬となる食材である牡蠣(カキ)ですが、河口付近に生息する生態を持つ牡蠣(カキ)は人々の生活排水による水質汚染の影響を受け易い為、ノロウイルスを含んだ生活排水が河口に排出されると、牡蠣はそれらを体内に取り込んで蓄積してしまう場合があるのです。
そういった汚染された牡蠣を十分に加熱されない状態で私達が食してしまう事は当然ながら感染のリスクを高める事になる訳なのですが、冬場は特に牡蠣を生のまま食する料理が好まれる傾向にある為、ノロウイルス感染症が流行する一因となってしまうと考えられています。
乾燥対策と生食の回避でノロウイルス予防を!
以上のように、冬場という環境が如何にノロウイルスにとって流行のチャンスとなり易いかがお判り頂けたかと思います。
であれば逆に私達はそれを逆手にとってノロウイルスが感染しにくくなるような対策を実践して行けば良い訳ですから、無闇にノロウイルスの脅威に怯えるのではなく、彼らの生態を良く理解した上で今後の予防方法を考えていきたいものですね!
*感染予防対策を考える際は併せてこちらの記事も参考下さい。
ノロウイルスの対策予防『手洗い編』
ノロウイルスの対策予防『ご家庭や職場での掃除・清掃編』
ノロウイルスの対策予防『殺菌・消毒編』