ノロウイルス感染症の良く知られた症状としてはその劇的な「嘔吐」と「下痢」にあります。
ですので、もし貴方が突然の腹痛や下痢の症状に見舞われてしまった場合、「この症状ってノロウイルスのせい!?」と不安になってしまう事と思います。
今回はそんな自身の症状がノロウイルスによるものかどうかを診断する為のポイントについてご紹介したいと思います。
ノロウイルス感染症の診断基準のポイント
ノロウイルス感染時の主な症状としては以下のものが挙げられます。
- 強烈な腹痛、及び強い下痢症状
- 頻繁かつ急激に嘔吐してしまう、吐き気をこらえられない
- 高熱ではなく37~38℃辺りの微熱が出る
こういう場合はノロウイルスではない?
下痢や嘔吐以外にも以下のような症状が出ている場合はノロウイルス以外の原因が疑われます。
- 便が白っぽくなり酸っぱい臭いがする(この場合はロタウイルス感染症の疑いがあります)
- 高熱が出る、咳や喉の痛みが酷い(いずれもノロウイルス感染時には見られにくい症状の為、風邪やインフルエンザ等の疑いがあります)
病院に行っても手っ取り早い確実な検査方法は無い?
「病院でノロウイルスに感染したかどうか手っ取り早く検査して貰えないの?」とお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、実は医療機関で診察を受けた場合、患者の症状がノロウイルスによるものかどうかをお医者様が判断する基準は基本的に患者への問診の内容が中心となっているのです。
その為、患者の症状の原因が確実にノロウイルスによるものであると医学的に証明する事は難しく、あくまでも問診内容から推定した上で「ノロウイルスの疑いがある」という診断を下す形となっております。
なかなか使い所の難しいノロウイルスの精密検査法
とはいえ問診だけに頼らずノロウイルス感染症の有無をもっと詳しく調べる為の検査法自体はあるのですが、ノロウイルスはその性質上、検査に時間が掛かってしまい検査結果が判明するのに数日間必要となる為、結果が出る頃には患者自身が既に回復に向かっているケースが多く、こうしたせっかくの精密検査も結局は意味が無くなってしまい易いとされています。
また、ノロウイルスの精密検査は保険が適用される対象が限定されているそうで、現状は幼児と高齢者だけがノロウイルスの精密検査の保険適用対象となっている為、対象外の患者の場合は相応の検査費用を支払って検査を受けなければならないようになっております。
精密検査の方法も精度によってピンキリ
とはいえ食品製造業等に従事する方の場合は自身がノロウイルスに感染したか否かは大変に重要な問題ではありますので会社の方針で精密検査を受ける機会も相応にあるかと思われますが、ここで注意したいのが検査法の種類についてです。
ノロウイルスの精密検査法には幾つか種類がありまして、実は一般的な医療機関で受ける事の出来るのはあまり精度が高くない検査法だけに限られており、ほぼ完璧な精度を誇る種類の検査法の場合は設備も相応のレベルのものが必要となる為、限られた特定のラボや行政機関でしか検査を受け付けておらず、なかなか一般の人には手が届きにくいものだったりします。
ただ、実際に過去に起こった事例として、本当はノロウイルスに感染していた食品製造工場の従業員が、精度の低い検査法を受けた際に感染の疑い無しと判定されてしまったせいで、その後すぐ業務に復帰してしまい工場で製造された食品を汚染した結果、製品の購入者の間で集団感染が発生してしまった事があったそうですので、手が届き易いからといって安易に精度が高くない検査法だけで済ませようとするのも敬遠したい所です。
ノロウイルスは研究妨害・検査逃れの達人
ともあれノロウイルスの検査にはこのように厄介な問題がつきまとっているものだったりするのですが、こういった難儀な事情は何も医療関係者の方々の責任ではなく、そもそもノロウイルスという存在自体が検査や研究の為の培養を行うのが大変に難しいという研究者泣かせの厄介な生態を備えているせいで、まだまだ現在の医学では研究が思うように進められていないが故の問題であるとも言えます。(培養出来ない=研究の為の実験も十分に行えないという訳ですね)
ワクチン等の特効薬が無い事でも知られるノロウイルスですが、まるで現代医学界に挑戦状を叩きつけるかのようなこういったタチの悪い生態を知るにつけ、どうも彼らは現代人の医療レベルの事を人類以上に良く理解しているのでは?と、ゾッとさせられる事があります。